タクシーの運転手が深夜にお客を拾う為徘徊していると、髪の長い女の人が手を挙げていた 髪が長過ぎて顔も見えない
気味の悪い客だったが乗せないわけにもいかず、目的地を聞くと町外れの山奥だった
こんな時間にそんな所になんの用だろうと疑問に思いつつタクシーを走らせると、なんとか指定された場所に到着した
代金を受け取ると女は山奥へとどんどん進んで行ってしまった
そこでタクシー運転手はピンときた
ひょっとすると、自殺でもするつもりなのではないだろうか
人の後をつけるなんて気が進まなかったが、万一のこともある そう思いタクシーをその場において後をつけることにした
女はどんどん進んで行く
タクシー運転手もできうる限り物音をたてないようについていくと、粗末な小屋が目に入った その女は小屋に入っていった
なんだ取り越し苦労か、と安堵しかけたが小屋の中で自殺しないとも限らない
負い目を感じながらも、タクシー運転手はその小屋の玄関の前へ近付いた 物音は聞こえない 鍵穴から中を除いてみる
中は真っ赤だった
どこを見ても赤、赤、赤
一間しかなさそうだ ドアも家具も、ない
そして女も...いない
確かに女が入って行くのを見たはずなのに
もしかしたら、死角にドアがあってそこから別の部屋に行ってしまったのだろうか

少しの間そこで部屋を覗いていても女は戻って来なかったため、タクシー運転手はそこを離れることにした 自分がこれ以上詮索するのはストーカーに違いない

タクシーに戻り、自分の行き過ぎた行動を後悔しながら麓までおりるとラーメン屋を見つけた 少し歩いた為空腹になっていたためタクシー運転手は立ち寄ることにした

ラーメン屋の主人に先程の自分の取り越し苦労について話していると
「そうかい...あの子に会ったのかい あの子 病気になってから塞ぎ込んでしまってねえ 可哀想に」

え?あの子どこか悪いんですか?

「あれ?あんた見なかったのかい? 目、真っ赤だったろ?」